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「高齢者住まい法」の改正ポイント。
高齢化の急速な発展に対応し、良好な居住環境を備えた高齢者向けの住宅の供給を促進させることを目的として、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」(略称「高齢者居住安定確保法」「高齢者住まい法」)が、2001年(平成13年)10月に施行されました。
この制度のポイントは、「高齢を理由として入居を拒否しない賃貸住宅」について貸主が登録し、入居希望者がそれらの登録賃貸住宅を閲覧できるよう情報提供を行うことにあります。
かつて「高齢であることを理由として入居を拒否しない賃貸住宅」のうち、もっぱら高齢者を賃借人とする賃貸住宅についての詳しい情報提供を行う仕組みとして「高齢者向け優良賃貸住宅の登録制度」を2005年にスタートし、続く2010年に一部を改正して、「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」や「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」についての登録基準を設けていました。
しかし2011年(平成23年)10月、「高齢者住まい法」は、大きく改正されました。
改正法において「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」登録制度が創設され、これまでの「高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)」「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」「適合高齢者専用賃貸住宅(適合高専賃)」「高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)」は廃止されることとなりました。
これらの登録内容は、廃止に伴いすでに自動的に失効しています。
サービス付き高齢者向け住宅の問題点。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では要介護1~2程度の入居者が全般に多くなっていますが、要介護度が大きく進んだ場合に別の介護施設に移り住まなくてはならない可能性は、やはり否定できないところです。
サービス付き高齢者向け住宅、利用者が知っておきたい概要。 で述べたとおり、サービス付き高齢者向け住宅では「契約者保護の強化」がはかられており、「利用者の居住の安定が図られた契約とすること」が事業者に義務づけられています。
「入居者が入院したこと、または入居者の心身の状況が変化したことを理由として、入居者の同意を得ずに居住部分の変更や契約解除を行わないこと」を、登録基準として明確に規定しています。
制度的にも行政の指導監督体制が強化され、また登録の取消基準や罰則(30万円以下の罰金)も用意されているものの、事業者の違反に対して行政や外部機関の目が行き届かないのではないか、監査の体制が追いつかないのではないかという問題点は、制度の発足時からすでに指摘されているところです。
これまでの有料老人ホームや介護施設においても、ルールや指導指針が明確に規定されていても遵守しなかったり、法改正に見ぬふりを決め込む事業者の存在が絶えず問題になってきました。
施設火災などの事件を受け社会問題化した、いわゆる「無届け有料老人ホーム」が、指導が強化された後もまだ数百単位で存在することなどは、その一例と言えるかもしれません。
ちなみに9割以上のサ高住は、有料老人ホームのような「特定施設の指定」を受けていないのが現状です(サ高住の「住所地特例」とは。 ご参照)。
国は「今後10年間で、60万戸のサービス付き高齢者向け住宅の供給」を目指しています。
「高齢者単身・高齢者夫婦世帯のみの世帯数」が、2010年からの10年間で245万世帯増加して1,245万世帯に達するとの試算が、その背景にあります。
行政の補助金や融資制度による支援・税制面での優遇措置も後押しとなり、1年で約6万戸のサービス付き高齢者向け住宅の供給が見込まれる状況です。
2011年末に4,000戸にも満たなかった全国のサ高住の登録数は、すでに23.4万戸(2018年8月末時点)に達しています。
サービス付き高齢者向け住宅の登録状況(平成30年8月末時点)【PDF】
(なお制度発足後の現状については、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)制度、開始後の現状と対策。 をご参照ください。)
高齢者がこれまで所有していた自宅について、サービス付き高齢者向け住宅への住み替えを側面から支援する「マイホーム借上げ制度」も、すでに用意されています。
一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」が、国の基金によるサポートも得て展開するもので、高齢者から所有宅を借り上げて転貸し、安定した賃料収入を保証するシステムです。
高齢者が自宅を売却することなく、サ高住に移り住むことができるメリットがあります。
「マイホーム借上げ制度」とは (移住・住みかえ支援機構)
JTI賃貸住宅情報 (移住・住みかえ支援機構)
果たして事業者や建物・サービスの質をチェックする自治体サイドは、このすさまじい供給スピードに追いつける体制をとり得るのでしょうか。
利用者としても購入前には十分に注意して、自衛的に事業者の信頼性や契約内容をチェックする必要があります。
万一入居者が認知症になったり、要介護度が重度化した場合にどうなるかなど、退去要件を含めた契約内容をあらかじめ自分の目できちんと確認しておく必要があります。
あまりに忙しい展開のため、安否確認や生活相談のサービスが形だけ用意されていても、その質が事業者によってバラバラになるリスクが否めません。
ビジネスチャンスを求める異分野からの新興事業者の参入もすでに始まっており、入居前に事業者の質を見分ける眼を持つ必要性は、有料老人ホーム選びの場合となんら変わりないのです。
ライバルとの競争が厳しくなることから、強引な勧誘や営業に出てくる事業者も出てくることでしょう。
「入居金が不要ないし低額」という敷居の低さから、入居者の借り換えも起こりやすくなりそうです。
供給戸数の増加に伴い、「サービス付き高齢者住宅間の移り住みを促す競争」も、激しくなってくるかもしれません。
また、経営に失敗して廃業する事業者の数も、残念ながらここ数年増える傾向にあります。
サービス付き高齢者向け住宅 現状と対策。
2011年10月に登録がスタートし、国がこれからの高齢者住宅の中核として60万戸の設置を目標として掲げる「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」は、すでに累計登録住戸数が23.4万戸(2018年8月末現在)に達し、全国的に相当の増加スピードで成長しています。特に、大阪・北海道・東京における着工数の増加が著しいとのことです。
サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析(平成30年8月末時点)【PDF】
しかし「サービス付き高齢者向け住宅」を名乗れるのは、住宅構造とサービス内容において一定の登録要件を満たしたうえで、登録を完了した物件のみです。
サービス付き高齢者向け住宅、利用者が知っておきたい概要。
入居費用(食費を除く)は月額5~20万円前後と、有料老人ホームなどに比べ低廉です。
それでも入居一時金が数十~百万円単位、居住面積が広い場合は入居費用も月額数十万に達するなど、敷居が高いと感じる世帯も少なくなさそうです。
管理費や食費・サービス利用費は生きている限り支払いが続くものですから、生涯の総支払額でみたときの経済的負担が大きすぎると、入居に二の足を踏む人も多いと考えられます。
サ高住は、有料老人ホームのように地方自治体による総量規制も受けず(有料老人ホーム、現状と入居前の注意点。 ご参照)、また国からの補助金も支給されていることから、株式会社や医療法人が中心となっての全国的な拡大傾向は、今後数年右肩上がりで続くものと見込まれます。
しかし介護業界以外(異業種)からの参入の増加も見込まれ、事業者の提供する介護サービスの質もいまだ玉石混交と言われます。
調査によると、食事サービスは95%のサ高住で提供されていますが、介護サービスや調理など家事サービスの提供はまだ5割程度とのことです。
高齢者住宅の登録戸数が大きく増えた一方で、残念ながら高齢者住宅の事業者の廃業も、年々増加傾向にあります。
国の補助金をあてこんで安易に参入した事業者の撤退や、経営破綻等によるものです。
過去に入居施設が何の前触れもなく突然閉鎖され、入居者が行き場を失うなどの事件も起きていることから、家族としては日頃から入居先の経営状態についても、注意を払っておくべきでしょう。
続きを読む "サービス付き高齢者向け住宅 現状と対策。" »
「介護系施設併設型」サ高住の注意点。
現在、競争率が高く入居まで年月を要する特養等の代替的受け皿として「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」がクローズアップされていることを背景に、介護事業所や診療所を同一施設内に併設するサ高住が増えてきています。
サービス付き高齢者向け住宅、利用者が知っておきたい概要。
最新の調査(2017年8月末)によるとサ高住全体の77.1%が何らかの高齢者生活支援施設を併設・隣接しており、主に「通所介護事業所(45.9%)」「訪問介護事業所(40.5%)」「居宅介護支援事業所(26.8%)」と、介護系施設が多くなっています。診療所や訪問看護事業所等の「医療系」は、まだ相対的に少ないようです。
サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析(平成29年8月末時点)【PDF】
一階に24時間体制で対応できるような介護事業所、二階以降を居室とするマンションタイプの施設が典型例ですが、症状が重く介護の必要性が高い入居者を、特定のフロアに集中させている施設もあるようです。
サ高住の入居者は、自室と事業所のある階を行き来して、必要に応じたデイサービスやリハビリサービスを受けることになります。
医療機関が多少離れたところにあるサ高住に比べ入居者の生活の安心感が高まることが大きなメリットで、「介護系・医療系施設の併設タイプ」は今後ともサ高住の中核に位置するものと思われます。
特定施設のサ高住と介護付老人ホーム。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では、併設された事業所あるいは外部の事業者らと契約し、居宅介護サービスの中から自分にあった介護サービスを個別に受けることになります(たとえ併設された介護系の事業所から選択したにせよ、形式的には外部の介護サービスを利用したことになります)。
サービス付き高齢者向け住宅、利用者が知っておきたい概要。 でもご説明したとおり、そもそもサ高住において義務づけられるのは「安否確認」と「生活相談」サービスであって、在宅系介護サービスの提供は必須の要件となっていません。
しかし細かく見ると、同じ「サ高住」であっても、入居者の要介護度の高い介護重視タイプとから比較的健康で自立した高齢者でなければ生活しにくいほぼ通常の賃貸住宅タイプまで、多様化・複雑化しています。
サ高住の登録開始以来、わずか1年半で登録戸数が100倍に膨らんだ現状からすると、これはむしろ当然のことかもしれません。
異なった届出・登録基準が併存する現状においては、「サ高住でもあり、有料老人ホームでもある」施設と、「サ高住(しかし、有料老人ホームではない)」あるいは「「有料老人ホーム(しかし、サ高住ではない)」が混在し、利用者から見て実にわかりにくい状態になっています。
なかでも利用者から見てわかりにくいのは「(手厚い介護サービスが組み込まれている)特定施設の指定を受けたサ高住」と、「介護付き有料老人ホーム」との違いです。
「介護系施設併設型」サービス付き高齢者向け住宅の注意点。 で記したように、現在は介護系事業所などを併設したサ高住が大半を占めており、外からは介護付の有料老人ホームそのものに見え、その違いがわかりにくい印象を与えます。
まず両者の定義・要件面での主な違いについては、以下のとおりです。
【サ高住】
【介護付有料老人ホーム】
サ高住の入居時期と住み替え。
要介護が重くなった後では入居しにくいイメージがある「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」。
しかし高齢者住宅財団の調査によると、入居者全体の54.6%が要支援者と要介護度1~2、そして全体の28.3%が要介護度3~5(平均の要介護度は1.8)とのことです。
「自立」入居者は全体のわずか12.8%に過ぎず、サ高住に「終の棲み家」としての役割が期待されているのも、また現実のようです。
サービス付き高齢者向け住宅等の実態に関する調査研究【PDF】(高齢者住宅財団)
実際に介護が必要になってはじめて、入居が難しく施設数が不足しがちな特養等のいわば代替的選択として、サ高住に入居してくる人も多いのが実情です。
入居から「看取り(みとり)」までを一貫して行なうことを、自ら積極的にアピールするサ高住も増えてきています。
現状、要介護度が高めの方が入居してくれるほうが、サ高住側も経営上の採算が取りやすい側面があるため(特定施設のサ高住~介護付有料老人ホームとの違い ご参照)、その意味では施設側と入居者側双方の思惑がある程度一致しているとも言えます。
人は新しい環境や人間関係に慣れるまでそれなりに時間がかかるものですが、ほとんど人の手を借りず自立した生活を送っている高齢者にとっては、あまり早いタイミングで高齢者住宅や老人ホームに入居するのも考えものかもしれません。
たとえば積雪量が多い地方で、本人の健康状態に問題は無いものの、冬に自宅前の除雪を日々行なうことが負担になってきたために早々に自宅を処分して、サ高住や老人ホーム等に入居を決めてしまうケースが少なくありません。
最初の入居がうまくいけばそれでも良いのですが、失敗して住み替えを考えるとなれば、次の入居候補先が空くまでの待機期間が発生するかもしれません。
最初の施設入居時に自宅をあわてて処分してしまうと、万一のトラブルの際の一時避難先となる場所がなく、困ったことにもなりかねません。
サ高住の「住所地特例」とは。
2015年(平成27年)4月より、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)に関わる「住所地特例の対象範囲の見直し」が行われました。
そもそも介護保険制度において被保険者は、自分の住所地がある市区町村の介護保険サービスを利用します。
しかし「住所地特例の対象施設」に転居入所し、その施設(のある住所)に自分の住所を移した場合、例外として「施設入所前の住所地の市区町村」が、実施する介護保険の被保険者になります。これが「住所地特例」と言われるものです。
このような制度が設けられた背景の一端に、2013年頃から都市部の高齢者が地方の介護施設に引っ越すケースなどが目立ち始めたことがあります。
このようなケースでは、移転先の市区町村に負担(市区町村が9割を負担する、介護給付費)が生じることになり、今後その市区町村が地域内の介護施設の整備を進めようとするほど、財政負担も過大になってしまいます。
下手をすれば将来的に、その市区町村の介護保険料の上昇を招きかねません。
このような状態を放置していては国全体としても、介護サービスの需給が大きく歪みかねません。これを緩和する目的で設けられたルールが、この「住所地特例」です。