特定施設のサ高住と介護付老人ホーム。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)では、併設された事業所あるいは外部の事業者らと契約し、居宅介護サービスの中から自分にあった介護サービスを個別に受けることになります(たとえ併設された介護系の事業所から選択したにせよ、形式的には外部の介護サービスを利用したことになります)。
サービス付き高齢者向け住宅、利用者が知っておきたい概要。 でもご説明したとおり、そもそもサ高住において義務づけられるのは「安否確認」と「生活相談」サービスであって、在宅系介護サービスの提供は必須の要件となっていません。
しかし細かく見ると、同じ「サ高住」であっても、入居者の要介護度の高い介護重視タイプとから比較的健康で自立した高齢者でなければ生活しにくいほぼ通常の賃貸住宅タイプまで、多様化・複雑化しています。
サ高住の登録開始以来、わずか1年半で登録戸数が100倍に膨らんだ現状からすると、これはむしろ当然のことかもしれません。
異なった届出・登録基準が併存する現状においては、「サ高住でもあり、有料老人ホームでもある」施設と、「サ高住(しかし、有料老人ホームではない)」あるいは「「有料老人ホーム(しかし、サ高住ではない)」が混在し、利用者から見て実にわかりにくい状態になっています。
なかでも利用者から見てわかりにくいのは「(手厚い介護サービスが組み込まれている)特定施設の指定を受けたサ高住」と、「介護付き有料老人ホーム」との違いです。
「介護系施設併設型」サービス付き高齢者向け住宅の注意点。 で記したように、現在は介護系事業所などを併設したサ高住が大半を占めており、外からは介護付の有料老人ホームそのものに見え、その違いがわかりにくい印象を与えます。
まず両者の定義・要件面での主な違いについては、以下のとおりです。
【サ高住】
【介護付有料老人ホーム】
ちなみにサ高住の居室面積は、「食堂・居間・台所等の共用部分が十分にある場合は18㎡以上でOK」となっています。
一般に自立した生活のための居住面積は25㎡以上が必要と言われますが、現状はこのいわば最低ラインとも言える13㎡~25㎡未満の物件が、全登録物件の約4分の3を占めています。
サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析(平成29年8月末時点)【PDF】
急速に増加するサ高住の運営会社の多くが、併設する介護系事業所から得られる介護保険収入を経営上増やすべく、主に要介護度の高い層に入居ターゲットを絞っているからではないか、との批判もあります。
介護付有料老人ホームの居室面積は1人あたり13㎡(一室あたりなら18㎡)以上ですが、比較して両者の空間的な差がさほど大きくないことも、一つの裏付けになるかもしれません。
最近は「特定施設の指定を受けたサ高住」も増えています(特定施設については、以下をご参照下さい)。
介護付有料老人ホーム、「特定施設」の記載をチェック。
有料老人ホーム(1)〔総論〕。
「特定施設」の指定を受けた施設としては「介護付有料老人ホーム」や「ケアハウス」が代表的ですが、指定により「特定施設入居者生活介護」という介護サービスが利用できることになります。
有料老人ホームの全体像~特定施設と介護保険利用の関係。
「特定施設入居者生活介護」では、入居者の要介護度に応じ日額ベースで単価設定された固定的な介護報酬を運営者が請求できるため、収入および施設経営の安定化につながります。
また利用者側も費用負担が一定額(施設が算定する介護報酬額の1割)になるため、安心してサービスを使えます。
さらにこの指定を受けると、広告や看板で「介護付き」を名乗ることができるため、他との差別化を意図してその記載を加えているサ高住もあります。
特定施設のサ高住では入居者の介護費用も一定範囲に収まり、また人員配置や設備でも一定の基準をクリアしているため、指定を受けていない通常のサ高住より手厚い介護を期待でき、入居の安心感が高まるメリットもあります。
しかしその反面、施設が提供する介護サービスを受けるしかなくなり、自分で自由に外部サービスを選ぶのが難しくなることはデメリットになります。
(なお「特定施設入居者生活介護」には「通常型」以外に「外部サービス利用型」もありますが、この場合も施設が契約した外部サービス事業者のみしか利用できません。)
介護付有料老人ホームと同じ特定施設の指定を受けているということは、たとえサ高住であっても、要介護度が高い(あるいは高まる可能性のある)入居者を最初から想定しているはずです。
したがって、入居時点で要介護度が低い(自立度の高い、比較的健康な)場合、
最初から「ついの住みか」としての覚悟を持って入居するなら問題は少ないかもしれませんが、要介護度の重い入居者と一律の対応を受けるのが嫌な場合は、先々のすみ替えも念頭に置くことが必要かもしれませんね。
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