サービス付き高齢者向け住宅の問題点。


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サービス付き高齢者向け住宅サ高住)では要介護1~2程度の入居者が全般に多くなっていますが、要介護度が大きく進んだ場合に別の介護施設に移り住まなくてはならない可能性は、やはり否定できないところです。


サービス付き高齢者向け住宅、利用者が知っておきたい概要。 で述べたとおり、サービス付き高齢者向け住宅では「契約者保護の強化」がはかられており、「利用者の居住の安定が図られた契約とすること」が事業者に義務づけられています。

「入居者が入院したこと、または入居者の心身の状況が変化したことを理由として、入居者の同意を得ずに居住部分の変更や契約解除を行わないこと」を、登録基準として明確に規定しています。

制度的にも行政の指導監督体制が強化され、また登録の取消基準や罰則(30万円以下の罰金)も用意されているものの、事業者の違反に対して行政や外部機関の目が行き届かないのではないか、監査の体制が追いつかないのではないかという問題点は、制度の発足時からすでに指摘されているところです。


これまでの有料老人ホームや介護施設においても、ルールや指導指針が明確に規定されていても遵守しなかったり、法改正に見ぬふりを決め込む事業者の存在が絶えず問題になってきました。

施設火災などの事件を受け社会問題化した、いわゆる「無届け有料老人ホーム」が、指導が強化された後もまだ数百単位で存在することなどは、その一例と言えるかもしれません。

ちなみに9割以上のサ高住は、有料老人ホームのような「特定施設の指定」を受けていないのが現状です(サ高住の「住所地特例」とは。 ご参照)。


国は「今後10年間で、60万戸のサービス付き高齢者向け住宅の供給」を目指しています。

「高齢者単身・高齢者夫婦世帯のみの世帯数」が、2010年からの10年間で245万世帯増加して1,245万世帯に達するとの試算が、その背景にあります。

行政の補助金融資制度による支援・税制面での優遇措置も後押しとなり、1年で約6万戸のサービス付き高齢者向け住宅の供給が見込まれる状況です。


2011年末に4,000戸にも満たなかった全国のサ高住の登録数は、すでに23.4万戸(2018年8月末時点)に達しています。

サービス付き高齢者向け住宅の登録状況(平成30年8月末時点)【PDF】

(なお制度発足後の現状については、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)制度、開始後の現状と対策。 をご参照ください。)


高齢者がこれまで所有していた自宅について、サービス付き高齢者向け住宅への住み替えを側面から支援する「マイホーム借上げ制度」も、すでに用意されています。

一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」が、国の基金によるサポートも得て展開するもので、高齢者から所有宅を借り上げて転貸し、安定した賃料収入を保証するシステムです。

高齢者が自宅を売却することなく、サ高住に移り住むことができるメリットがあります。

「マイホーム借上げ制度」とは (移住・住みかえ支援機構)
JTI賃貸住宅情報 (移住・住みかえ支援機構)


果たして事業者や建物・サービスの質をチェックする自治体サイドは、このすさまじい供給スピードに追いつける体制をとり得るのでしょうか

利用者としても購入前には十分に注意して、自衛的に事業者の信頼性や契約内容をチェックする必要があります。

万一入居者が認知症になったり、要介護度が重度化した場合にどうなるかなど、退去要件を含めた契約内容をあらかじめ自分の目できちんと確認しておく必要があります。


あまりに忙しい展開のため、安否確認や生活相談のサービスが形だけ用意されていても、その質が事業者によってバラバラになるリスクが否めません。

ビジネスチャンスを求める異分野からの新興事業者の参入もすでに始まっており、入居前に事業者の質を見分ける眼を持つ必要性は、有料老人ホーム選びの場合となんら変わりないのです。

ライバルとの競争が厳しくなることから、強引な勧誘や営業に出てくる事業者も出てくることでしょう。

「入居金が不要ないし低額」という敷居の低さから、入居者の借り換えも起こりやすくなりそうです。

供給戸数の増加に伴い、「サービス付き高齢者住宅間の移り住みを促す競争」も、激しくなってくるかもしれません。

また、経営に失敗して廃業する事業者の数も、残念ながらここ数年増える傾向にあります。

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サービス付き高齢者向け住宅は、住宅の建物としての品質もさることながら、外部の介護・医療サービスとの連携体制とその提供のスムーズさが、住まいとしての品質を決めることになります。


地方の場合、施設の数が足りていても、定期巡回・随時対応サービス(24時間地域巡回型訪問サービス)を展開する外部の事業者が揃わずに、サービスの供給体制にバランスを欠く状況が生じうるかもしれません。

供給事業者が住宅の一角にサービス事業所を併設するなどして、事業者自らがすべてを包含したサービスを展開する体制を整えるならば、そのような不安は軽減されるでしょう。


しかし調査によれば、デイサービス・訪問介護などを提供する介護事業所を併設するサ高住の数は、すでに全体の8割以上に達しています。

入居者が基本的にそれらの系列事業所の介護サービスの利用を促される、いわば事業者による「囲い込み」によって、利用者がサービス内容に不満を持った場合であっても、他の外部サービス事業者を使う選択の自由が狭まるリスクは残ります。

要介護度の低い(自立度の高い)入居者は、いずれ要介護度が高くなったときの備えとしての安心感は持てるものの、現在の自分の身体の状態に応じた介護サービスを選んだり、関連出費を調整したりすることは難しくなります

また最近は新たに、サ高住の入居者本人が必ずしも必要としない介護サービスの利用を促される、「過剰介護」の問題も指摘されています。


サービス付き高齢者向け住宅の普及に伴い、現状から予期しがたい問題が近い将来起きてくる可能性は、もちろんあります。

ただしサービス付き高齢者向け住宅と言えども利用者目線に立つなら、介護施設や有料老人ホームを選ぶときの選び方と基本的に大きな違いはありません。

人生の後半を長く暮らすための大切な住まいである以上、問題が起こってから事業者の責任を追求するという「事後処理的な対応」だけでなく、契約前に本人や家族ができるだけ調べ、危なそうな施設をあらかじめ回避する用心深さを身につけるべきではないでしょうか。


まずは「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」等で、地元の物件比較のための基本的な情報を得ることが第一歩になりますね。

サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム(一般社団法人 高齢者住宅推進機構)


事業者の企業概要・経営者の理念・施設長との面談に、入居者の体験談や近隣の口コミ、メディアや外部機関の評価などのプラス・マイナスを加味して、総合的に判断するようにします。

施設本体だけでなく、普段の買い物のための周囲の商業施設の有無とアクセス・ある程度スペースをとった駐車場があるかどうか・冬の積雪量が多い地域ならば居室周辺の除雪対応など、日常生活上の利便性についてもチェックが必要ですね。


外部サービスを自分で手配する可能性がある場合は、供給事業者の評判や、サービス内容に不満な場合代替が可能かなど、自分なりに情報を集めチェックする手間暇を惜しまないことが大切です。

とりわけ医療機関との連携体制がどうなっているかは極めて重要なので、納得がいくまできちんと確認しておきたいものです。

加えて防犯や火災対策・避難訓練の実施など「施設としてのセキュリティ対策」についても、忘れず確認しておきましょう。


突然の事業の廃業や撤退なども実際に起きている以上、運営者の経営状態も、情報収集が可能な範囲でチェックしたいものです。

経営成績などは公開されていない施設が大半ですが、入居者数の推移や入居者家族の口コミ、あるいはスタッフの離職率等に関わるちょっとした変化を年単位で観察し続けると、経営上の異変にも気づきやすくなるはずです。


もちろん「居室内の住み心地」を、できる限り想像力やイメージを駆使してチェックすることも非常に大切です。入居の目的から考えても、一番長く人生の時を過ごす場所は、居室になるはずだからです。

身体活動にさほど問題のない高齢者にとって、狭い空間はある種の心理的圧迫感を感じさせます。残念ながら現状のサ高住のおよそ7割が、自立した生活のために望ましいとされる25㎡(専有部分床面積)すら満たしていません


また室内の日当たりや換気・防音なども、年単位の生活サイクルから見て、許容できるレベルかどうかを確かめる必要があります。特に夏の暑さや冬の寒さは、冷暖房費の増加という入居コストにも関わってきます。

コストという点では、仮に入居金が無くともサービス利用のための費用は生涯かかり続けるため、あらかじめ予算のシミュレーションをちゃんとしておく必要もありますね。


既存の高専賃や高円賃がサービス付き高齢者向け住宅に鞍替えしているような場合、すでにある程度の評価や実績も定まっているため、それらを参考に決めていくことも可能でしょう。

しかし新規物件については、比較するための物件数が、地元にある程度そろってきた段階で検討するのも一方法かもしれませんね。

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