「介護系施設併設型」サ高住の注意点。
現在、競争率が高く入居まで年月を要する特養等の代替的受け皿として「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」がクローズアップされていることを背景に、介護事業所や診療所を同一施設内に併設するサ高住が増えてきています。
サービス付き高齢者向け住宅、利用者が知っておきたい概要。
最新の調査(2017年8月末)によるとサ高住全体の77.1%が何らかの高齢者生活支援施設を併設・隣接しており、主に「通所介護事業所(45.9%)」「訪問介護事業所(40.5%)」「居宅介護支援事業所(26.8%)」と、介護系施設が多くなっています。診療所や訪問看護事業所等の「医療系」は、まだ相対的に少ないようです。
サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析(平成29年8月末時点)【PDF】
一階に24時間体制で対応できるような介護事業所、二階以降を居室とするマンションタイプの施設が典型例ですが、症状が重く介護の必要性が高い入居者を、特定のフロアに集中させている施設もあるようです。
サ高住の入居者は、自室と事業所のある階を行き来して、必要に応じたデイサービスやリハビリサービスを受けることになります。
医療機関が多少離れたところにあるサ高住に比べ入居者の生活の安心感が高まることが大きなメリットで、「介護系・医療系施設の併設タイプ」は今後ともサ高住の中核に位置するものと思われます。
サ高住のサービス提供人員と、併設された介護事業所の訪問介護員は、それぞれが「別個の施設」として、人員や勤務体制などの設置基準を満たす必要があります。
ただし訪問介護事業所のサービス提供の責任者は「常勤」でなくてはならないため、事実上サ高住の職員としてのサービスを行うことができません。
したがって非常勤の同一職員が業務を兼ねることになりますが、この場合は「勤務の時間帯を分ける」等の対応が必要になります。
現実には双方を兼ねている非常勤の訪問介護員も多く、ケアプランに書かれたサービスを提供している時間以外に、サ高住の職員として相談・安否確認等の業務を行なっているわけです。
訪問介護事業所の職員として勤務している時間帯に、ケアプラン記載サービス以外のサービス(すなわち介護保険上の提供が認められていないサービス)を、サ高住の職員として提供することはできません。どんなに勤務時間や体力に余裕があったにせよ、これは許されないわけです。
逆も同様で、たとえばサ高住の管理者として勤務している時間帯に入居者の身体介護を行ったときは、それを訪問介護として保険請求することは許されず、介護保険上の「不正請求」となります。
設備についても、介護保険サービスとして行われる食堂や浴室などの施設は、介護保険上の要件を満たす専用の設備でなければなりません。
例えば介護保険法に規定される要件を満たさないサ高住内の食堂で、介護サービスとしての食事介助が行われた場合、介護報酬返還の対象となります。
上記の理由により、増加傾向にある「サ高住併設タイプの介護事業所への行政の指導」が、今後強まってくるとの見立てもあります。
入居者から見ると「同じ建物内で働く同一人物」なため、日時を気にせず色々頼みたくなるかもしれませんが、施設側は両者の区別のための記録を作成し、厳格にスケジュール管理を行なわなくてはならないことは、入居者としても理解しておく必要があります。
住所地特例の問題など、自治体ごとに細かな運用上の違いもあるとのことなので(サ高住の「住所地特例」とは。 ご参照)、併設型サ高住への居住を考えるうえで気になる点があれば、市区町村の担当窓口に個別に確認するほうがよいでしょう。
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