高齢者住宅、「入居後の要介護度悪化」リスクへの備えについて。


入居費用は手頃であるものの、入居待ちの人数が入居者数にほぼ匹敵する数十万人に達する「特養」に代表される「介護保険三施設」。

また、特定施設への総量規制が続くなか、新設数の増加も期待できず、入居一時金などが高止まりしたままの施設も多い「介護付有料老人ホーム」。

介護への対応がしっかりした、高齢者が安心して住むことのできる「住まい」への入居のためのハードルが高まる一方のなか、高専賃に代表される「高齢者住宅」が、近年ますます脚光を浴びてきています。


「良好な居住環境を備えた高齢者のための住まいの安定的な確保」を目指した「高齢者居住安定法」が、2001年に施行された後、介護サービスを提供しながらも有料老人ホームとしての届出が不要で、その開設も自由な高齢者住宅は、まさに急速な勢いで普及しつつあります。

このような開設条件の緩さは、不動産会社や建設デベロッパーなどの参入による「高齢者住宅マーケット」のにぎわいを生むと同時に、手頃な負担で介護付き施設への入居を希望する層にとって、十分に警戒すべき状況にあると言えます。

介護保険三施設介護付有料老人ホームへの入居がなかなかかなわない層をターゲットとして、「高齢者(向け)住宅」をうたい文句にする物件の熾烈な契約獲得・販売競争が、日本中で繰り広げられています。


高齢者の入居を拒まない「高齢者円滑入居賃貸住宅」の拡大版として、もっぱら賃借人の対象を高齢者だけとして創設された制度である「高齢者専用賃貸住宅(高専賃)」。

これはあくまでも「任意の登録制度」であって、義務ではありません。
また管轄も、介護関連の行政を全般に受け持つ厚生労働省ではなく、国土交通省となっています。

建築物としての規制こそ敷かれているにせよ、介護サービスというソフト面においてほとんど規制がなく、サービス面での問題が生じたときも行政指導や命令の権限が無いこの「高専賃」に代表される高齢者住宅

高齢者住宅における介護サービスの質のバラツキは、現状においてきわめて大きくなっていると言わざるを得ません。


とある調査によれば、全国の登録済の高専賃のうち、入浴や排泄に関わるサービスについては外部サービスの紹介も含め一切関知しない、と答えた事業者の数は過半数に達したそうです。


実際、高齢者住宅の多くはアピールポイントとして、バリアフリーなど「設備のハード面」や、夜間の緊急時にボタン一つで警備員が駆けつけるといった「緊急時のセキュリティ」に力を入れる傾向があり、広告でもそれらを前面に押し出したPRがなされています。

しかし入居する側にとっては、いまは元気であっても、将来自分がどれくらいの介護が必要な状況になるかよくわからないまま、まだ普及し始めて数年程度のこれら高齢者住宅への入居を、営業マンに背中を押されるまま、決断しているような状況にあります。

この「時間の経過による、入居者の要介護度の悪化への対応を真剣に考えている事業者ばかりとは限らないことを、高齢者住宅への入居を考える側としては、よく警戒しておく必要があります。


高齢者住宅では通常、外部の介護サービスを利用するため、ケアマネジャーが作成したケアプランをベースとして、介護費用の支出計画をたてていきます。


しかし万一、入居者の要介護度が大きく悪化するような事態となった場合は、外部サービスを利用するスタイルでは介護保険の限度額をすぐに突破してしまう状況となりやすいため、超過分については全額自腹でまかなわなければならなくなります。

高齢者住宅でのメリットでもありますが、あくまで賃貸借契約であるため(他の居住者の迷惑となるなど、よほど重度化した場合を除き)要介護度の悪化によって退去しなくてはならないといった事態には、通常はなりません。


しかし、高齢者住宅に住み続けたまま要介護度が悪化しているため、介護保険だけでは金銭的にこの先とてもまかないきれない…といった、いわば想定外の事態に陥った場合にどう対応するか。

長期間の入居待ちが常態化している介護保険三施設や、あるいは介護付有料老人ホームなど他の介護施設に、果たしてスムーズに移り住むことができるのかどうか。


施設の空きの有無といった問題のみならず、現在の高齢者住宅に入居を続けたままで入居一時金などを新たに用意できるかといった費用面の懸念もでてきます。


高専賃(適合型高専賃)に代表される高齢者住宅は、メリットも多々有してはいるものの、販売する側への法的規制・行政の監督が弱い現状においては、「要介護度の重篤化」について入居者にある程度の道筋を示せる事業者の数が、絶対的に少ない状況です。


現在の「高齢者住宅ブーム」の勢いにのせられるまま、よく事前調査もせず、あるいはよく考えもせずに契約に踏みきることは、購入側・入居者にとって大変にリスクを伴う行為でもあることを、認識しておきたいものです。


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