全供給数の4割強、「介護保険三施設」。
前コラムでご説明のとおり、一口に高齢者住宅といっても数多くの種類があるので、順を追ってご紹介します。
まず「介護保険が適用される入所施設(介護保険三施設)」について、説明します。
なお、ここで「介護保険が適用される」という場合、介護保険の「施設サービス」が適用される(「施設サービス」利用時における自己負担額が原則1割となる)ということを指しています。
どの施設に入所するか、その施設でどんな施設サービスを受けるかは、利用者が介護や医療の状況に応じて自由に選ぶことができます(ただし希望する施設の側に空きがなく入所できない、といった制約は当然あり得ます)。
訪問介護や訪問入浴・デイサービスやショートステイなど介護保険の「居宅サービス」、そして「地域密着型サービス」は、(介護付)有料老人ホームやケアハウスなどの「特定施設」やグループホームなどの「認知症対応型共同生活介護施設」において、要介護認定に応じて受けることができます。用語としての「施設サービス」と「居宅サービス」の二つを混同しないよう、注意しましょう。
「介護保険が適用されない入所施設」については有料老人ホームの全体像~特定施設と介護保険利用の関係。 のコラムを、また介護保険については介護保険、そして「ケア付の高齢者住宅」について。 のコラムを、それぞれご参照ください。
それでは「介護保険が適用される入所施設(介護保険三施設)」について、ご説明します。介護保険で定めた「施設サービス」が適用となる対象施設、ということです。
ただし、介護保険の給付の対象からはずれる「居住費」や「食費」そして洗濯代やティッシュ代、理美容代金などの「日常生活費」、いわゆる「ホテルコスト」は、2006年4月の介護保険法改正により全額自己負担となっています。介護保険利用による1割の自己負担ですべて済むわけではないことを、注意しておく必要があります。
【注記】
ちなみに2015年(平成27年)4月の「改正介護保険法」により、8月から「一定以上の所得者」の介護保険の自己負担額は2割に引き上げられています(平成27年(2015年)の介護保険改正(2)~利用者負担と補足給付の見直し ご参照)。
さらに2017年(平成29年)の改正介護保険法により、2割負担者のなかで「より所得の高い人」については、2018年(平成30年)8月から3割負担になります(政令で定める条件に該当する、現在の2割負担者の一部の方に適用)。 平成29年(2017年)の介護保険改正(1)~現役並み所得者の自己負担が3割に ご参照。
「居住費」と「食費」は、厚生労働大臣により利用者負担となる基準費用額が決まっているため、金額の目途がつきやすいものの、とりわけ「日常生活費」は要介護の度合いに応じて数万円以上の出費となる場合もあり、最終的に結構な金額となる場合が多いので、注意しておく必要があります。
なお、「居住費」「食費」は、入所者本人と主たる扶養義務者の収入(負担能力)に応じて徴収され、施設との契約によって決まるため、一応の相場はあっても、施設により金額が異なると考えておきましょう。
「居住費」「食費」は所得によって負担限度額が決まっており、また低所得者はこれらの減額を受けるための「負担限度額の減額申請」を行うことができますが、2015年4月の「改正介護保険法」により、今後は負担軽減の判定要件が厳しくなります。
介護保険の「施設サービス」が適用となる対象施設には、
(1)65歳以上の常時介護を必要とする人が対象の「介護老人福祉施設」(特別養護老人ホーム)
(2)入院治療の必要はないが、リハビリ・看護が必要な人を対象とする「介護老人保健施設」(老健)
(3)病状が安定期にある要介護者に、介護等の世話や機能訓練などを行う「介護療養型医療施設」
の三つがあり、俗に「介護保険三施設」と呼ばれています。
これらは、地方公共団体や社会福祉法人、医療法人によって運営される「特定施設」です(なお「特定施設」については、有料老人ホームの全体像~特定施設と介護保険利用の関係。 を参照ください)。
現在、全国で3万件近く供給される高齢者住宅・介護施設数の4割強が、この「介護保険三施設」で占められる構図になっています。
次の記事から、この介護保険三施設のそれぞれの特徴と、入所にあたってのメリット・デメリットについてご説明します。
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