高齢者住宅とは、そもそも何か。


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高齢者住宅は、定まった法的な定義のある用語ではありません。

(ただし2011年(平成23年)10月の改正「高齢者住まい法」によって創設された「サービス付き高齢者向け住宅」は、法的に登録要件が定まっており、登録していない物件は「サービス付き高齢者向け住宅」と名乗ることはできません。)

一言でいってしまえば、「高齢者に配慮した住まい、ないし高齢者専用の住まい」であり、そしてこの点だけが、以下に述べる住まい全般における共通点になります。


端的に言えば、バリアフリーマンションに高齢者が多く住んでいて、彼らの多くが、時々訪問介護サービスを受けている。

このようなマンションを「高齢者住宅」と呼んでも別に間違いではないのが、現在の状況です。

分類するための切り口としても、「施設(建物)」に着目するか、「介護付か否か」で分類するか、介護付の場合は「入所型」か「在宅型」か、など、いろいろな切り分け方ができるのが現状で、すぐには理解し難くなっているのが現状です。

また、居住権についても、一時金を払い「終身利用方式」として權利を得るのか、通常の賃貸マンションのように家賃を月払いしていく「(終身)賃貸方式」になるのか、という違いがあります。

ここでは、いちばんイメージしやすいと思われる考え方、すなわち「その高齢者の住む場所における、サービスの受け方」の違いからみた分類を中心に、高齢者住宅を整理していきたいと思います。

すなわち、

・「有料の老人向け施設に住み、介護その他のサービスを受ける"入所施設"タイプ」か、
・「訪問介護など、外部サービスを必要に応じて受ける"賃貸住宅"タイプ」か、

の主に二つに着目して、その種類を整理します。

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実際上の問題として、「高齢者住宅の種類は多いほうがよい」という見方もあります。

高齢者住宅といえば「有料老人ホーム」をイメージする方も多いと思いますが、厚生労働省はこれを介護の必要の有無という点から、「介護付」・「健康型」・「住宅型」の3類型に分類しています。


また施設という面からみれば、以下順次説明を加えてまいりますが、介護保険の施設サービスの適用がある「介護保険三施設」の他に、「グループホーム」「シルバーハウジング」「ケアハウス(介護利用型)」「サービス付き高齢者向け住宅」など、様々な名称で呼ばれる数多くの種類があります(介護施設については、姉妹サイト「介護施設と介護老人福祉・保険施設 その種類と役割」も参照下さい)。


先進国の中でも突出して高齢化が進む日本で医療費の抑制に苦慮する厚生労働省は、「社会保障制度改革」の旗印のもと、これまでの「施設介護」から「在宅介護」の推進へと、急速に舵を切りつつあります。


介護保険三施設の現状と、高齢者住宅としての今後。で説明のとおり、国は全国にいまだ5.9万床(2016年3月現在)残っている「介護療養型医療施設」について、当初予定の廃止期限こそ延長し続けているものの、現時点で引き続き廃止を進めていく姿勢を撤回していません

(ちなみに2012年4月から、介護療養型医療施設の新設は認められなくなっています。

厚生労働省の調査(2014年)によれば、介護療養型医療施設でもっとも多い在所者の要介護度は「要介護5」(55.8%)および「要介護4」(32.2%)、といった現状があります。

そうなると、特に退去を迫られる要介護の高い高齢者たちは、いったいどこでどうやって生活していったらいいのか…といった問題が出てきます。

地方自治体や社会福祉法人が運営する「介護保険三施設」は満員の状況が続き、「特養」などは要介護者であっても、何年も空きを待たなくてはならない状況が続いています。

さらに2015年(平成27年)4月の「改正介護保険法」により、今後の特養への新規入所は、原則として「要介護3以上」に限られることとなりました。

たとえば身体的には健康だが、認知症の進んだ要介護1~2の方などの特養への入所が、極めて難しくなったわけです。


加えて有料の老人ホームは一般に高額で、すんなり入居させてあげられないのが現状です。

だからと言って、精神的にも体力的にも大変なエネルギーを要する在宅介護は、現実問題として対応が可能かどうかわからない。

このような非常に難しい選択と判断を迫られる「高齢者のいる家族」が、この日本で今後ますます増えていくことは確実です。


そのような方々の受け皿としての「高齢者住宅」が一層クローズアップされているのは間違いないですし、金銭面の負担など個々の事情に照らして考えれば、高齢者本人とその家族にとって検討のための選択肢は数多くあるほうがベター、という見方もできるでしょう。


いずれにせよ高齢者住宅を利用する場合には、施設の事前見学費用負担の問題はもとより、入居する本人の希望なども総合的に考慮し、じっくり検討したうえで決めるべきでしょう。

それでは次の記事から、高齢者住宅のさまざまな類型について説明してまいります。

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