種類別にみる高齢者の住まいと、入居者の輪郭。
厚生労働省の分科会資料(2014年6月)から、全国の高齢者住宅の分布状況・入居者の輪郭について、種類別にその違いを比較してみます。
【PDF】高齢者向け住まいについて(厚生労働省 社保審)
資料によると、要支援・要介護高齢者(566万人)の約8割強は「在宅」で介護を受けており、施設介護を受けているのは残りの2割(100万人弱)となっています。
【施設数の内訳】
上記を定員数ベースで見た場合、特養が51.6万人・有料老人ホームが35万人弱と、最も多くなっています。
グループホームは施設数が最も多いだけでなく、定員数もこれらに次ぐ17.7万人で、認知症を患う高齢者の多さが伺えます(グループホームはこれでもまだ、全国的な施設数の不足が指摘されています)。
認知症の家族の介護と、介護施設の利用。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は戸数ベースで15万戸弱となっており、2011年(平成23年)の登場以来、一貫して右肩上がりの増加を続けています。
サービス付き高齢者向け住宅の概要。
県別のサ高住の登録状況は、東京都・埼玉県・大阪府・千葉県・神奈川県・北海道・兵庫県・広島県・福岡県などが突出して多い状況です。
訪問介護事業所など、介護保険サービスの事業所を1つ以上併設しているサ高住は全体の82%。またサ高住のサービスの利用状況としては、「居宅介護支援」「訪問介護」の利用率が、とりわけ高くなっています。
「介護系施設併設型」サ高住の注意点。
サ高住の入居者のプロフィールとしては、平均の要介護度が1.76、平均年齢が82.1歳となっています。入居者の5割以上が80歳以上で、最多となっています。
しかし要介護4が10.2%・要介護5の入居者も6.3%おり、要介護度が重くともサ高住に暮らす人が一定数いることがわかります。
一方、有料老人ホームでは、全体のうち3,308件(39%)が「介護付」、5,100件(61%)が「住宅型」となっています。「健康型」は、無視できる程度に少ない状況です。
有料老人ホーム(3類型)、特徴と違い。
近年は「介護付き有料老人ホーム」に比して、「住宅型有料老人ホーム」が急成長していますが、定員数ベースで見ると介護付が20.4万人(59%)、住宅型が14.3万人(41%)であり、いまだ介護付有料老人ホームの入居者数のほうが多い状況にあります。
介護保険サービス事業所(訪問介護事業所など)を1つ以上併設する住宅型の有料老人ホームは82.7%とサ高住と同程度に高いものの、介護付き有料老人ホームではこれが、全体の41.9%に留まっています。
有料老人ホームの入居者の実態は、平均の要介護度が2.19、平均年齢は84.4歳。いずれもサ高住よりわずかに高めとなっていますが、80歳以上が5割以上と最多を占める点は、サ高住と同様です。
有料老人ホームは入居一時金の支払いに加え、月額賃料がサ高住に比べて高い傾向にあることから、中間所得者層以上の入居者の割合が高くなっていると推測されます。
有料老人ホーム、「入居一時金」「月額利用料」の相場は。
有料老人ホームに比べ費用が低廉で入居しやすいとされるサ高住に要介護4~5の入居者が一定数いることは、一口にサ高住といっても施設により、その対応力・介護サービスの提供能力に相当の違いがあることを暗に示しています。
入居側としては、「どのようなサ高住なのか」をよく見極める必要があるということですね。
ちなみに、「サ高住の9割以上が、食事サービスを提供している」との国土交通省の調査結果があります。
【PDF】サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析(国土交通省)
したがって制度上は有料老人ホームの届出義務があるため、サ高住の9割以上が有料老人ホームにも該当するはずですが、報道で時おり見かけるとおり、全国的に「無届け施設」が相当数存在しているのが現実です。
特定施設のサ高住と介護付老人ホーム。
無届け有料老人ホームとは何か。その背景と問題点とは。
高齢者住宅への入居にあたっては、「事前に入念に調査して、できるだけ将来のリスクを回避する作業が必須」というのが、やはり結論になりそうですね。
すべての記事(記事一覧)は⇒ こちらから