有料老人ホーム、見学前のポイント(1)。
いまや有料老人ホームは、要介護・要支援者を受け入れる「介護付有料老人ホーム」が、その主流となっています。
介護付有料老人ホームの数も全国で2,000施設を超えており、入居を考える側としても、その選定においてしっかりとした事前調査を行い、最適な施設を選ぶための基準を持たなくてはならない時代になってきています。
施設見学の前に、優良な介護付有料老人ホームを選ぶためのチェック・ポイントを、いくつか確認しておきましょう。
まずは「入居一時金」です。
入居一時金は、0円をうたい文句にする施設から、数億円と超高級感をただよわせる施設まで、施設によって設定の幅が非常に広くなっています。
改正老人福祉法により、これから新設される有料老人ホームにおいては、運営会社が倒産しても入居金の一定額までが保証される「入居金保全措置」が義務づけられています。
また、入居契約後90日間のクーリングオフ(契約解除)も、あわせて義務づけられています。
有料老人ホームは、入居一時金と月額利用料を支払って居室及び様々なサービスを利用できる権利を得るいわゆる「利用権方式」が多いため、入居者の死亡時や退去時において入居一時金が戻って来ないというトラブルがかねてから絶えなかったことから、そのような規定が設けられました。
【平成24年(2012年)3月追記】
上述のクーリングオフ規定があるにもかかわらず、「有料老人ホームの入居一時金をめぐるトラブル」が一向に絶えなかったことからさらに老人福祉法が改正され、この「90日以内の契約解除に伴う一時金の返還(90日ルール)」が法制化されました(2012年4月1日から施行済)。
今回の法改正によって「90日ルールの内容が法的に確定」されるとともに、都道府県の改善命令および罰則(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)も設けられました。
(有料老人ホーム、「入居一時金」の保全措置について。 ご参照)
特に入居一時金が高額な場合、その「償却」方法がどうなっているかについても、注意しておく必要があります。
初期償却の金額割合が大きくなる「定率法」を採用しているということは、万一何かあったときに、施設側の取り分がそれだけ多いということを意味します。
これはある意味、それだけ入居者より経営優先・利益重視の運営姿勢が強いということですし、あるいは施設として資金繰り上の問題を抱えている可能性も無きにしもあらずです。
入居者にとっては、「定額法」が採用されていて、入居一時金の初期償却の金額が低めに設定される方が望ましいといえるでしょう。
2006年4月以前に設立された有料老人ホームにおいては、前述の「入居金の保全措置」を取っていない施設も、いまだ数多くあります。
そのような施設においては、万一の倒産のときなど、入居一時金が返還されないリスクが生じることになります。
このリスクを補うため、親会社や銀行の連帯保証などがあるか、または施設側が独自に民間保険等に加入する等、何らかの具体的対策をとっているかどうかも、契約前にチェックしておくべきでしょう。
また、経営全体の状況を見るには、入居希望者に契約前に渡すことが望ましいとされる「重要事項説明書」の入念なチェックが、必須となります。
これは、有料老人ホームの入居希望する本人や家族のために、費用の詳細、医療体制・職員の勤務体制、入居一時金の償却内容、設備やケアの詳細についての説明等、契約に関わる重要事項が記載された書面です。
契約時には、利用者への交付・説明が義務づけられております。
素人にはわかりにくい難解な用語もちりばめられていますので、わからない部分はじっくり質問し、また不安な点があれば、こういった分野の取扱件数が多い行政書士や弁護士などの外部の専門家に相談してみるのもよいでしょう。
そして、「入居契約書」。
同じく重要な事項がたくさん記載されている書面ですので、やはり契約前には時間をとって、検討したいところです。
しかしながら、入居者に判断の余裕を与えないためか、契約の直前になってこれらの書面をはじめて出してくるような施設もあるとのことです。
「重要事項説明書」や「入居契約書」について入居希望者にそのような態度しか取れない施設は、入居希望者に対する情報開示の姿勢に問題があると言わざるを得ず、十分に注意してかかる必要があります。
そして最終的には、見学会や「体験入居」に参加することによって、実際の様子や雰囲気を確認することが必要です(体験入居は1泊2日二食付きで、費用は1~2万円前後が一般的相場のようです)。
とりわけ有料老人ホームの善し悪しは、「職員の質」によって大きく左右されると言われます。
職員の定着率についても、体験入学時などに職員の方にさりげなく勤務年数や職場の居心地を尋ねてみるなどして、注意を払いたいところです。
どの有料老人ホームも概してパンフレットなどが綺麗に作られており、また金額的なお得感があるようなイメージ広告を出している施設なども珍しくないものですが、そういった表面的な部分に惑わされず、「重要事項説明書」と「入居契約書」、そして日時を変えた複数回の見学や体験入居を中心に据えて、じっくりと検討するようにしたものです。
そのためには、ホームへの入居を間際になってあわてて決めることのないよう、家族が入居者の立場にたって将来設計を行うと共に、実際に入居するかなり前の段階からこれらの事前調査をしっかり行っておくようにしたいものです。
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